2025 第63回 大調和展 ・受賞者一覧
内閣総理大臣賞 : 大谷 良子 武甲立つ晩秋の秩父路
石灰岩の採掘により、山体が大きく変容した武甲山を麓の秩父の里から捉えた。縦長画面の上方に武甲山を描き、下方半分に秋の深まりによる枯れた木々と草を描く。前景の小川、中景の山裾の枯れた田畑と白い建物、遠景に聳える山を仰ぎ見、近景から山の頂までの広大な空間を、穏やかな筆致と確かな描写で表現した。白雲棚引く秋空を背に、鋭い山頂を見せる武甲山を描き出し、その存在感を示した秀作である。(講評 美術評論家 清水康友)
この作品は、人と自然の本情を描いたリージョナリズム(地域主義)の秀作といえる。今作が彫心鏤骨にして前作を凌駕するものとなったのは、作者の粘り強い取材とリフレーミングによる縦位置の、その山容を表出させたからに他ならない。まず目に止まるのは、人の手によって採石され無惨な姿の武甲山と、それが低地の河川から立ち上がる壮観な大景である。そして人の営みを伝える中景の台地、頭上には高積雲が浮かぶ天空と、眼下に間断なく流れる川も、この妙境を構成する重要な要素である。だからこそこの絵には気韻生動が感じられる。まさにトップ賞に相応しい一作と言えよう。
(講評 美術評論家 設樂昌弘)
文部科学大臣賞 : 早川 皓章 柘 榴 ー 内からの力 ー
扁平な画面中央を横断する黄のライン、その上部は美しく深いローズレッド、下半分には多くの柘榴がころがる。左端に垂直に立つトルソ、枯れた向日葵にマンドリン等、右端には花とランプを配し、中央は大きく空けた。横への展開と縦横を示す大胆な構成が、視覚に迫る。画題の意は柘榴の実の内から弾ける様子ではなく、絵具を重ねた画面が放つ内面からの力感を指すのである。理知的構成と、強固な絵肌による静物画は、魅力満点である。(講評 美術評論家 清水康友)
本作はヴァレリーからパスティーシュした心象だ。外皮が裂け弾け飛んだ柘榴は詩人の想像上の風景だが、もはや画面からは絶対的な安寧が、何処にも存在しない様子が描かれている。例えば単に作者は、今日の戦争にみるペシミスティックな世相を描いているわけではない。もっと逆説的なビジョンを表現しているのである。グリューネヴァルトの《イーゼンハイム祭壇画》のように、痛みを一身に背負った表現なのだ。その帰結として画面中央には、黄色く地平線が輝き、天文薄明の如き淡い二本の線が描かれる。これは聖なるものの顕現ヒエロファニーだ。この絵は感覚形象の作品なのである。(講評 美術評論家 設樂昌弘)
東京都知事賞 : 福井 良一 大きな岩壁(龍王峡)
画面の中央に水流に削られ、断面を見せる大きな岩壁を捉えた。下方には、岩の間を流れる渓流を描き、岩壁の上には緑豊かな葉を付けた木々が、びっしりと立ち並ぶ。岩壁の表現は作者独特の感性によるもので、様々な色と形が組み合わさり、不思議な形象を表出する。その造形感と存在感が作品の見せ場となり、視覚に強く印象付けられる。左脇の奥に至る小路が、奥行きを作る。作者の描きたいという思いが、ユニークな造形を生み出した。(講評 美術評論家 清水康友)
まずは自然をそのまま鑑賞石に昇華した、その自由な発想力に惹き付けられた。石の模様には独自のパレイドリア現象が表れる。左側に頭を向けるガメラのような模様、右側にはセミの幼虫、ニュルとした脱皮の毛虫など、私が以前むささび橋まで行った折には、このような奇石は一つも見出すことが出来なかった。作者の非凡な才能に脱帽である。さて観者はこの絵に何を思うだろうか。私はお釈迦様の“盲亀浮木”の逸話を思い出した。目の見えない亀が100年に一度海面に出て、穴の空いた木に頭を突っ込むという有難いお話しである。今後も作者には深い創造力を期待したいと思う。
(講評 美術評論家 設樂昌弘)
岸田劉生賞(特別賞) 垣内 宣子 フィレンツェ・ドゥオーモと礼拝堂
第63回大調和展において「岸田劉生賞」、「岸田夏子賞」を頂いたことについて
今回、岸田劉生のお孫さんである画家・岸田夏子氏より、「岸田劉生賞」並びに「岸田夏子賞」を頂いたことは大調和会にとって大変光栄なことであり、私にとっても非常に感慨深いものがある。
大調和とは、私がまだ女子美大の学生であった1963年、武者小路実篤が理想郷として開村した「新しき村」の村外会員として関わったことに始まる。第4回大調和展(1965年)に初めて出品し今日に至っている。その間、様々な困難もあったが、大調和展を繋げていくことに懸命に努めてきた。
63回展の授賞式において、夏子氏は今回の授与について次の通り説明された。
「実篤先生は劉生の作品の発表の場として大調和を創られた。第1回展(1927年)、第2回展(1928年)後、1929(昭和4)年に劉生が急逝したため、大調和展も2回展で解散となった。今日の大調和展は、1962(昭和37)年に復活再興され、63回展を迎えられた。実篤先生の創立精神や大調和創設の背景をよく理解したうえで、大調和を守り、今日に繋げてくださったことへの感謝の気持をこめて、今回垣内宣子氏と畑中博氏のお二人に岸田劉生賞と岸田麗子賞を授与することを決めた。」
劉生・麗子・夏子氏と3代にわたり大調和に関係し、今回その名を冠した賞を頂いたことに感謝し、大調和の発展のため、今後も尽力していくつもりである。
岸田麗子賞(特別賞) 畑中 博 好日(瀬戸内)
大調和賞 赤羽 盛義 守 護 1
武者小路賞 木村千津子 秩父田園
優秀賞 田嶋 麗子 トランプは平和の使者?
会員努力賞 寒河江智代子 ヒョウ柄のワンピース
会員努力賞 菅原 清美 秋の峡谷
会員努力賞 外池 邦夫 迷 路
会員佳作賞 飯田 千代子 箱根旧街道
会員佳作賞 郷田 紀子 日本最北端の夜明け
会員奨励賞 桑原 香枝 立夏のひかり
会員奨励賞 関 哲 行き交う人々(ボローニャ)
会員奨励賞 武内 玲子 秋の実り
会員奨励賞 渡邉 成男 立 姿
努力賞 新堂 雅彦 キャベツ畑
努力賞 沼尻 正芳 新緑(八郷から筑波山)
努力賞 山崎 来 PRIME
努力賞 平井 寛美 清里晩夏
佳作賞 信田 秀子 城ヶ崎海岸
佳作賞 三浦 のり子 憧れのポプラ(我孫子)
佳作賞 阪本 好啓 追憶(活版生活)
佳作賞 皆木 光弘 瀬戸内のマリーナ
奨励賞 阿比留 泰雄 あるカフェの仲間たち
奨励賞 清水 皓毅 甲斐駒ヶ岳の午後
奨励賞 雨宮 尚子 三姉妹Ⅱ
奨励賞 吉村 周子 永遠に!
小品優秀賞 宗像 三和子 不忍池「冬」
小品優秀賞 芳賀 亜佑美 静物・華
小品努力賞 藤原 雅子 明るく元気に
小品努力賞 大竹 節子 ミラノから来た男A
小品佳作賞 稲田 重年 七月の来客
小品佳作賞 佐藤 正章 帆船とドローン
小品奨励賞 岡村 公 出港準備OK
小品奨励賞 橋爪 弘 今が幸せ
東美賞 中村 雅子 八ヶ岳晩夏
東美賞 中澤 剛貴 婦人像
彩美堂賞 中野 正之 亀山公園と三限川堰
彩美堂賞 中村 松代 鳴門海峡 うず潮・動
ホルベイン賞 千脇 八重子 緋い花器の芍薬とリラ
クサカベ賞 生方 正代 巡礼者(チベット)
クサカベ賞 新田 義征 春の総持寺境内
トークロ賞 根本 浩二 渓谷の水面
ターレンスジャパン賞
岩谷 勝 緑の休日
マルオカ賞 飯田 康行 カナダ・バンフの山並と貨物列車
ミューズ賞 高井 きよ たまねぎ
ミューズ賞 林 恵子 共 鳴
ミューズ賞 樋口 敦一 気球に乗ったふたり
大額賞 落合 照男 古民家順礼(竹原)
バニーコルアート賞
丸山 秀孝 プラハにて
世界堂賞 田中 歌子 京都観光で出会ったお嬢さん二人 ハイ・ポーズ
学生優秀賞 齋籐 梓月 鬼灯の夜遊び
学生優秀賞 髙木 聡 花 図
学生佳作賞 石川 夏乃音 姉弟の日常
学生佳作賞 草壁 冬紀 London "25
学生佳作賞 末藤 樹梨 氷 柱
学生佳作賞 中村 由衣 季節は巡る、キツネは化ける
学生佳作賞 森野 愛梨 好奇心
学生佳作賞 桞下 愛風 瀕死の奴隷
学生奨励賞 犬飼 紗良 自画像
学生奨励賞 嶋田 萌花 親愛なるあなた
学生奨励賞 高橋 冴妃 cobalt blue
学生奨励賞 田中 奈都 かめのゆりかご
学生奨励賞 西田 七彩 誕生日の晩御飯
学生奨励賞 花澤 実咲 仲良し
学生奨励賞 宮川 ひなた 御幸公園
モンゴル学生奨励賞 シュレー 踊り
モンゴル学生奨励賞 ナンディンソゥブド モンゴル風景
モンゴル学生奨励賞 ハタンブラグ モンゴル女性の美しさ
2024 第62回 大調和展 ・受賞者一覧

内閣総理大臣賞 早川 雅信 ポンヌフ(パリ)

文部科学大臣賞 木下 秀明 有明の月

東京都知事賞 隱樹万友子 解脱・ガンジス

大調和賞 小倉惠美子 イブキ(柏槇)

武者小路賞 上田 和子 地球を廻ろう!
優秀賞 渡邉 成男 もの思い
会員努力賞 助川 長子 仲良し3地蔵
山内信之介 散歩道
会員佳作賞 井上志津子 まなざし
佐野栄美子 梅薫る
松尾江美子 世界の終わりと再生
会員奨励賞 宇井 加美 75年目の出港
桑原 香枝 刻とともに
坪井 明人 ブローニュの森Ⅲ
努力賞 平井 寛美 退役軍人
山崎 来 黎 明
佳作賞 雨宮 尚子 三姉妹
沼尻 正芳 郷土の偉人「間宮林蔵」の肖像
宮本 重信 青い小屋
奨励賞 阿比留泰雄 あ・り・が・と・う
生方 正代 コッツウォルズ
酒井 寿雄 アンコールワットの見習い僧/サマネー
三浦のり子 風景 大崎(宮城県)
小品優秀賞 皆木 光弘 睡蓮池の鯉
谷津真智子 大都会
小品努力賞 田中 歌子 天を彩る
新田 義征 初夏の養老渓谷遊歩道
小品佳作賞 飯田 康行 モアナサーフライダーホテル2023
佐藤カリガーシュ グリーンドア、または赤い耳の猫
小品奨励賞 江川 誠 八ヶ岳主峰・赤岳。登山日:2024年冬
佐藤 正章 旅のはじまり
東美賞 寺門 啓 函館教会と街並
彩美堂賞 梅 崇太 川 崎(A)
ホルベイン賞
阪本 直樹 アロワナ
クサカベ賞 清水 皓毅 芦ノ湖青天
鶴田 茜音 炎(ホムラ)
トークロ賞 吉村 周子 永遠の想(小豆島)
ターレンスジャパン賞
新 悟 品格のある女性
マルオカ賞 中村 松代 龍
ミューズ賞 脇濱 美里 レンゲ ー 故郷
大額賞 黒田 薫 闇に生きるものたち
バニーコルアート賞
中澤 剛貴 少 女
世界堂賞 橋爪 弘 元気ですよ!
学生奨励賞 柏木 日菜 無 題
小谷 真央 路面電車
小松 由奈 くたびれ
桜井 彩乃 暖かい日差
佐野 樹里 郵 便
澁谷 音緒 深紅の晴れ着
鷲見 明衣 無 題
白井 瑞希 散歩道
モンゴル学生奨励賞
B.アヌージン 沈 黙
D.アリウナー 夢のキツネ